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【第1回】杉野工務店の図面にない話~四代目として、受け継いだもの~

杉野工務店の図面にない話

四代目として、受け継いだもの

スギ
バナ

回
第1回
編
社長編
話し手
代表取締役 佐古 英樹
掲載日
2026年10月23日
図番
SB-01-P
四代目として、受け継いだもの

連載「杉野工務店の図面にない話」(通称:スギバナ)が始まります。
図面には描かれない、つくる人の思いをお届けします。
第1回は代表取締役の佐古英樹が、会社のこれまでとこれからを語ります。

その180年を迎えて、「感謝しかない」

杉野工務店は、2026年、おかげさまで創業80周年を迎えました。この松山の地で80年続けさせてもらえたことには、本当に感謝しかありません。

始まりは、戦後間もない1946年(昭和21年)です。中島出身の大工だった創業者の杉野久一が独立し、松山市松前町で創業しました。松前町の近くの平和通りには、昔は材木屋が並んでいて、樽をつくる職人も多かったそうです。木が手に入る場所だったからこそ、大工としてそこで始めたのだと思います。

1969年(昭和44年)に法人化し、株式会社杉野工務店となりました。
1989年(平成元年)に社員が増えてきたことから、資材置き場として使っていた今の清住に本社を移しました。

80年を振り返って思うのは、当社は社員と協力業者さんに本当に恵まれてきた、ということです。「“人”がすべて」ということを、ずっと言い続けています。創業の頃からお付き合いのある業者さんもいます。
業者さんが「杉野さんのためにやってあげよう」と思ってくれる仕事と、「まあ、ええか」と思ってする仕事は、絶対に違います。前者のように思ってもらえることが、何よりありがたい。そして、その業者さんたちをきちんとまとめてくれる現場監督たち、また会社を守ってくれている事務のみんなにも、大変感謝しています。

人と人のつながりに感謝することで、すべてがうまく回っていく。「縁に感謝」です。

代表取締役 佐古 英樹

その2お客様が納得してくださること、それがすべて

私が杉野工務店に入社したのは、2002年(平成14年)、34歳のときです。それまでは総合電機メーカーに勤め、中国・四国を担当していました。家族の事情が重なったことに加えて、結婚したときから先代に「うちに来るか」と声をかけてもらっていたこともあり、入社を決めました。「35歳までなら新しいことを覚えられる」と話していたので、ぎりぎりでしたね。

入社してからは営業として、先代の後ろについて回りました。現場監督として最初から最後まで担当したのは、学校の現場の1件だけです。

実は、先代も私も、建築の資格は持っていません。だからこそ、お客様の側に立ってお話をすることができます。技術者の目で見れば「この納まりなら仕方ない」と思うところも、お客様の目で見れば「なぜこの仕上がりなのか」と言えます。技術者の視点で見るか、お客様の視点で見るか。これは先代からの教えでもあります。

先代から一番強く言われたのは、「お客様が納得していないのにお金をいただいたら、それは仕事とは言えない」ということです。お客様が納得してくださるからこそ、その対価としてお金をいただける。納得していないお客様からは二度と声はかかりませんし、その評判はすぐに周りへ広がります。だから仕事の大小に関係なく、すべてにきちんと向き合う。それが当社、杉野工務店だと思っています。

社長を引き継いだ2017年(平成29年)、先代からこれといって特別な言葉はありませんでした。ただ一言「お前の思うようにやれ。間違っとったら直してやる」と、全部任せてくれたんです。
このように言っていただいた先代には感謝しかありません。
ただ、一番怖い人でもありました。任せているから口は出さない。でも、全部わかったうえで「これ、どうなっとる?」と聞いてくる。

今は私も、同じように社員に聞いていることがあります(笑)。

その3変えていくもの、変えてはいけないもの

現在の清住の本社
現在の清住の本社

社長になってから、時代の変化に合わせて変えてきたこともたくさんあります。
今では当たり前になりましたが、品質マネジメントシステムのISO9001に加えて、環境マネジメントシステムのISO14001、労働安全衛生マネジメントシステムのISO45001を取得しました。今の規格は実務に沿ったものになっていて、会社を守る仕組みとして役立っています。

現場のペーパーレス化にも取り組んでいます。図面を紙からタブレットに切り替えています。若い監督たちを中心に、徐々に慣れてもらっています。職人さんの中には紙の図面がいいという人もまだ多く、図面に手書きで説明したほうが早い場面もあります。そこは無理をせず進めています。
AIも、現場監督が調べものや書類づくりに使い始めました。自社でも、AIの仕組みづくりを進めているところです。

一方で、変わらないもの、変えられないものは“人”です。人のつながり、信頼や信用の積み重ねは、変えないというより、守るために努力し続けているものです。社員が辞めたいと思わない会社であること。業者さんが「杉野とは付き合いたくない」と思わない会社であること。それを守るのが、会社の役目だと思っています。

私が大切にしているのは、名前で呼び合える関係です。大きな会社にいた頃、一番うれしかったのは、会社名ではなく自分の名前で呼ばれることでした。名前を呼ぶのは、その人を信頼しているからこそです。うちの社員も「杉野さん」ではなく、一人ひとりが名前で呼ばれるようになってほしい。それはゴールではなく、信頼のスタートだと思います。

好きな言葉は「縁に感謝」です。人と人のつながりがあって、そこに感謝することで、すべてがうまく回っていく。仕事も、生活も、そう思っています。

今、現場監督は10人で、そのうち8人が1級建築施工管理技士です。ほかに設計担当が2人、住宅の営業と施工の両方を担う技術者が1人います。社長になってからの9年間、現場監督たちが一番働ける時期を一緒に走ってくることができました。来年で就任10年を迎えます。
次の10年は、若い人をどう迎え、どう育てていくかが大きなテーマとなります。

その4100年に向けて、恩返しを続ける

昭和時代、建物が完成した記念品として作っていた焼物
昭和時代、建物が完成した記念品として作っていた焼物

建設業界は厳しいと叫ばれていますが、今が一番厳しいとは思っていません。建設会社が次々に倒れた時代も見てきましたから。ただ、建築費も金利も上がり、建物が建ちにくくなっています。これからの数年が、本当の勝負だと思っています。

杉野工務店が目指すのは100年企業です。当社は今年80周年を迎えましたが、通過点にすぎません。100年目には、技術もデジタル化も今とはまったく違っているでしょう。それでも、日本の職人たちの高度な技術は、機械には真似できません。ものを建てるのも“人”、そこに住むのも“人”。それはいつの時代も変わりません。

この「スギバナ(杉野工務店の図面にない話)」の連載を始めたのは、杉野工務店のこと、そしてものづくりの会社であることを広く知ってもらうためです。これから人が減っていく中で、ものづくりを仕事にしたい若い人が一人でも増えれば、業界全体のプラスになります。当社だけでなく、それぞれの工事を担う業者さんたちにも光が当たればうれしいですね。
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~お仕事を探している方へ~
建築を学んでいなくても大丈夫です。ものづくりがしたいという思いがあれば、学歴や経歴にはこだわりません。高校の建築科に入りたくても入れなかった子もいます。でも、その子には思いがある。実際にうちには、建築とは別の分野を学び、カーディーラーで働いていた社員がいて、今は2級建築施工管理技士を取得して現場に立っています。好きこそものの上手なれ、です。

~そして、お客様へ~
杉野工務店が80年続いてきたのは、お客様がいてくださったからです。これからも、きちんと恩返しができる会社であり続けること。それが私たちの務めだと思っています。
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取材日:2026年10月15日

次回のスギバナ

第2回 社員編|入社した頃の杉野工務店

11月に公開予定